マジセンチメンタルツーリング

マジセンチメンタルツーリング

伊勢志摩は東海に住むバイク乗りの間ではツーリングスポットとして有名である。パールロードや伊勢志摩スカイラインなどの名道に加え、美味しい食事あり、観光地あり、温暖な気候のおかげで冬でも走れる、というツーリングにはうってつけのエリアだ。

ところで、この10月で僕がmoto guzziに乗るようになってちょうど1年近くが経った。この1年間で愛知、岐阜、静岡、東海地方のいろいろな場所を走った。

だけど、ちょっと個人的な理由があって、伊勢志摩にはバイクで一度も行けないでいた。

〜3年前〜

もう3年前の冬のことだ。僕は仕事で1年間、三重県志摩市ではたらくことになった。会社に入ってまだ間もない時期だったが、一度現場を経験させるという方針のための移動だった。まあ、ちょっとした修行みたいなもんだ。

もちろん、名古屋から通えるはずもなく、僕は志摩市に引っ越すことになったわけだ。

知らない街の風景、冬の冷たい空気、慣れない仕事への不安。今思えばあの頃の僕は憂鬱な気分を抱えながら日々を過ごしていたように思う。

そんな当時の僕のたったひとつの救いが、同じ職場にいた派遣の田中さんである。田中さんは僕より少し年上の女性で、持ち前のチャーミングなキャラクターでいつも職場を和ませてくれた。

当然のごとく、僕は田中さんに恋をしてしまったんだけど、一度ドライブを一緒にした時、勢いで告白してあっさりと振られてしまった。

伊勢志摩の道は、あの頃の仕事への憂鬱や助手席に座っていた田中さんのことを否応なしに思い出させる。

だから僕は、バイクに乗るようになってからもなんとなく伊勢志摩に行けないでいた。

〜2週間前〜

RIDEMATEでキャンプツーリングの誘いがあった。キャンプツーリングは未経験なものの、前々から興味があったので是非とも挑戦してみたいと思っていたタイミングであった。

参加の返事をしようと投稿されていた詳細情報を追っていくと、キャンプ地として記載されていたのは、僕がかつて住んでいた志摩市だった。

三年前のことを思い出して、返事を躊躇した。だけど、もう三年も経つんだし、いつまでも引きずっているわけにもいかない。いっそのことキャンプツーリングの思い出で全てを上書きしてしまおう。そう思って、僕はキャンプツーリングに参加することを決めた。

〜出発前日〜

男のライダーはたいていロングツーリングにはテンガを持っていくんだけど、今回は急遽参加を決めたため、あいにくストックがない。

早急に参加人数分の8つを用意する必要があったため、最寄りのDVD屋さんに車を走らせた。

みんな知っていると思うが、DVD屋さんの一角はその手のグッズコーナーになっているので、急ぎの際には重宝する。

みんな知ってると思うが、大抵使い方のよく分からない道具を買おうとしているオジサンに遭遇する。そんなときには、互いに見えてないフリをするのが大人のマナーってやつだ。

みんな知っていると思うが、DVD屋さんのレジは客と店員が顔を見合わせて気まずくならないように垂れ壁が設けられており、安心してショッピングを楽しめるシステムが構築されている。

流石に8個も買うとそこそこの重量になってしまった。それはまるで、久しぶりの伊勢志摩や初めてのキャンプツーリングに緊張した僕の気持ちの重さに比例しているように感じられたんだ。

〜3年ぶりの伊勢志摩〜

御在所SAで集合し、志摩市は御座のキャンプ場を目指す。

伊勢市までは高速を使えばあっという間に到着する。そこから志摩市までは下道を走ることになる。当時、車でよく走っていた道だ。

嫌なことを思い出さないように走りに集中しようとした。大きなバッグをリアシートに積んでいるせいか、はじめてのキャンプツーリングに緊張しているせいか、テンガが多いせいか、いつもよりも車体がが重く感じる。

買い出しなどを道中で済ませつつ、志摩市は御座のキャンプ場にたどり着く。志摩市の景色は3年前と何も変わらず綺麗だった。

山は植樹とは異なる自然のままの木々に覆われ、少しずつ色味の違った緑色でパッチワークのように賑やかに彩られる。

海はそれが当たり前かのように澄んでいて、屈折した砂の灰色、反射した山の緑や空の青が半透明に混ざりあう。丁寧に塗り重ねた水彩画のように、底の色から水面の色までの全てが溶け合って一つの色を作りだす。

初めてのバイクでのキャンプは、まあ、ほとんど飯食って酒飲んでただけなんだけど、とりとめもなくバイクの話をしたり、車の話をしたり、キャンプ道具の話をしたり、少しプライベートな話をしたりで楽しく過ごすことができた。

帰りにはパールロードを走った。志摩市と鳥羽市を結ぶこの辺りの土地は、海と山が隣接した地形が高低差のある道を作り出している。高くから海を見晴らせる道や、海抜が低く海を間近に感じられる道が連続する。

昨日の道中よりも、心なしか軽快に走れた気がした。テンガをみんなに配った分、荷物が軽くなったおかげだろうか。

少しだけ、この道を派遣の田中さんを助手席に乗せてドライブしたことを思い出したけど、不思議と寂しくはなかった。

〜これから〜

風の噂で聞いたが、派遣の田中さんは結婚して、どこか僕の知らない、遠い町に引っ越してしまったそうだ。どうか元気に暮らしてほしい。

思い出は上書きするものじゃなく、何層も何層も塗り重ねていくものらしい。深い色や淡い色、鮮やかな色、その全てがいつまでも半透明なまま僕の記憶に居座り続ける。

これから僕は、バイクで伊勢志摩に何度も行くだろう。

伊勢志摩の道は、働き始めたばかりのこと、派遣の田中さんのこと、RIDEMATEと走ったこと、いろんな気持ちが入り混じった、僕の大好きな道になった。

(RIDE MATEの発展を妨げるので、テンガの話題を持ち出すのは今回で最後にします。不快な思いをした方がいたら、yaehボタンを押してください。※面倒くさいので無視してください。2020.02.03追記)

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コメント

  1. 記事を最後まで読まないと
    yaehの意味が逆であることに
    気づけなかった
    危なかったw汗

  2. 文章が上手い。^_^
    お疲れ様でした。またいこー

  3. 僕は少しぐらいテンガ人がいてもいいと思っています。

  4. これからはテンガのような道具に頼らずに、自分の手でなんとかしようという意気込みです。
    なんとかしようというのは下の処理の話ではなく、文章の構成のことなので、変な深読みはしないでください。

  5. 押しそうになりました(笑)

  6. ややこしいシステムにしてしまいすみません・・・

  7. いやぁマジ山田さん‼️
    RIDE めいとで読んだ中で一番面白かったです(`✧∀✧´)

    派遣の田中さんに幸あれ

    ※トヨタの車が…TNGAとか言い出した時には
    ついに時代もここまで来たか‼️と言う感慨深い想いを思い出しました(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑

  8. 読んでいただいてありがとうございます。TNGAについては私もネットニュースを空目しました笑

  9. 文章、ウマイ❗️
    才能アリですね(^^)
    昔はキャンプツーリング散々しましたが、今は仕事の関係で行くことが出来ません。
    沢山行って思い出を増やして下さい。
    楽しいツーレポ、ありがとうございました。

  10. >ヤマハトレーサーさん
    読んでいただいてありがとうございます!

  11. 成就しなかった恋愛こそ
    光輝く『捨てがたい宝物』なんですよね

    田中さんに幸あれ

    伊勢志摩は僕のホームコースで大好きな道です

    現在のオキニ嬢と切れたら
    VRとTENGAにシフトして余生を全うしようと思います